2026年10月15日
旋盤加工で金属はどう削る?加工手順・種類・可能な形状を詳しく解説旋盤加工で金属はどう削る?加工手順・種類・可能な形状を詳しく解説
ものづくりの現場において、円柱状の部品を高精度に削り出す「旋盤加工(せんばんかこう)」は、欠かすことのできない代表的な金属加工技術です。自動車部品、航空宇宙産業、家電製品、医療機器など、私たちの身の回りにあるあらゆる製品に旋盤加工の技術が活かされています。
しかし、これから金属加工の依頼を検討している方や、設計・調達の担当者様の中には、「旋盤でどのような加工ができるのか」「他の加工方法と何が違うのか」「具体的な手順はどうなっているのか」といった疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
本記事では、金属の旋盤加工の基礎知識から、旋盤加工の種類、旋盤加工可能な形状、そして実際の旋盤の加工手順までをわかりやすく徹底解説します。最適な部品製作を行うための参考として、ぜひ最後までお読みください。

金属の旋盤加工とは何か?
金属の旋盤加工とは、回転している円柱状の金属材料(ワーク)に対して、固定された刃物(バイト)を押し当てて削り出す切削加工の一種です。英語では「Turning(ターニング)」と呼ばれます。
ろくろを回して粘土の形を整える陶芸の作業を、金属の塊と硬い刃物に置き換えたものとイメージするとわかりやすいでしょう。元の金属から不要な部分を削り落としていく「除去加工」であるため、材料の歩留まりは鋳造などに比べて下がりますが、その分だけ1000分の1ミリ(ミクロン)単位の極めて高い寸法精度を実現できるのが最大の特徴です。
切削加工の代表格「フライス加工」との違い
切削加工のもう一つの代表格に「フライス加工(Milling)」がありますが、両者には加工の仕組みに明確な違いがあります。図面を見た際に、どちらの機械を使って加工すべきかを判断する重要なポイントとなります。
・旋盤加工:材料(ワーク)が回転し、刃物(バイト)は固定されたまま移動して削ります。丸い形状(回転体)の部品作りに適しています。
・フライス加工:材料(ワーク)は固定され、刃物(エンドミルやフライス)が高速回転しながら移動して削ります。角ばった形状や平面、複雑な溝の加工に適しています。
旋盤加工は、中心軸からの距離が一定となる「同心円状」の加工において、フライス加工よりも効率的かつ高精度な加工が可能であり、金属加工の根幹をなす技術と言えます。
執筆者のひとこと:「材料が回るか、刃物が回るか」という単純な仕組みの違いですが、現場でのアプローチは全く異なります。特に旋盤は連続して綺麗な面を削り出せるため、ミクロン単位の精度がピタッと決まった瞬間の一体感と美しさは、職人として何度経験しても飽きない面白さがあります。
旋盤加工の種類と代表的な加工方法
一口に旋盤加工といっても、刃物の形状や当て方、送り方を変えることで、1つの機械で多種多様な加工を行うことができます。ここでは、代表的な旋盤加工の種類を8つに分けて詳しくご紹介します。
1. 外径加工(外径切削)
回転する材料の外周に外径用のバイトを当て、指定の太さ(外径)になるように削り落とす加工です。旋盤加工の中で最も基本となる工程であり、単純に円柱の直径を細くするだけでなく、途中で太さを変えて段差をつける「段付き加工」を行う際にも用いられます。モーターの軸や駆動シャフトなど、ほとんどの旋盤部品にこの外径加工が施されています。
2. 内径加工(中ぐり加工・ボーリング)
ドリルなどで事前に開けられた穴の内側(内径)に、専用の中ぐりバイト(ボーリングバー)を入れて穴を広げたり、内面をなめらかに仕上げたりする加工です。パイプ状の部品や、高い内径精度と滑らかさが求められるベアリングのハウジング(受け座)などを製造する際に不可欠な工程です。
3. 端面加工(正面削り)
円柱状の材料の先端部分(切断面)にバイトを当て、平らに削る加工です。ノコギリで切り出したばかりの材料の端面は粗いため、まずは端面加工を行って材料の長さを正確に揃えます。また、この平らにされた端面は、その後の外径加工や穴あけ加工を正確に行うための「基準面」として機能する非常に重要な役割を持っています。
4. 突切り加工(つっきりかこう)
すべての加工が終わった部品を、元の長い材料(母材)から切り離す加工です。薄く細長い「突切りバイト」を使用し、材料の側面から中心に向かって深く切り込んでいきます。材料が切り離される瞬間に部品が飛んでいって傷がつかないよう、回転数を調整したり、専用のパーツキャッチャーで受け止めたりする工夫が必要です。
5. 穴あけ加工
材料の回転軸の中心に対して、ドリルやリーマを押し当てて穴を開ける加工です。汎用旋盤の場合は、心押し台(テールストック)という部分にドリルを取り付け、手動のハンドルを回して材料に押し当てていきます。内径加工やねじ切り加工を行う前の「下穴」を開けるための前工程としても多用されます。
6. ねじ切り加工
ねじ切り専用の刃先形状を持ったバイトを使用し、材料の回転とバイトの移動速度(送り量)を正確に同期させることで、一定のピッチ(間隔)の螺旋状の溝を掘る加工です。材料の外側にねじ山を作る「おねじ切り(ボルト形状)」と、開けた穴の内側に作る「めねじ切り(ナット形状)」の両方が可能です。規格化されたねじだけでなく、特殊なピッチの台形ねじなども自由自在に削り出すことができます。
7. テーパー加工・球面加工
材料を斜めに削って円錐状にする加工を「テーパー加工」と呼びます。配管の接合部や、部品同士を摩擦で強固に固定する箇所などに用いられます。また、丸みを持たせて球状にする「球面加工」も可能です。特にNC(数値制御)旋盤を使用することで、刃物がX軸とZ軸の2方向へ同時に滑らかに動くため、複雑な曲線形状も正確に削り出すことができます。
8. ローレット加工(ナーリング)
つまみやダイヤルなど、手で触れる部分のすべり止めとして、材料の表面に細かい網目状(アヤ目)や平行線(平目)の凹凸を転写する加工です。厳密には金属を削り取る切削加工ではなく、硬いローラー状の工具を強い力で金属に押し当てて変形させる「塑性加工(そせいかこう)」の一種ですが、旋盤上で行われることが多い工程として知られています。
執筆者のひとこと:1つの部品にこれら複数の加工が盛り込まれている図面は珍しくありません。刃物を何度も交換することなく、いかに効率的な順番でこれらの加工を組み合わせるかが、加工者の腕の見せ所となります。
旋盤加工可能な形状一覧
旋盤は「回転体」を作ることに特化した機械であるため、以下のような形状の製作において非常に優れたパフォーマンスを発揮します。
- 単純な円柱・円板形状: シャフト(軸)、ピン、カラー、ワッシャー、スペーサーなど。あらゆる機械の骨格や連結部に使用されます。
- 段付き形状: 太さが途中で段階的に変わる段付きシャフトなど。ベアリングや歯車を特定の位置に固定するモーターの回転軸などに多く見られます。
- 円錐形状(テーパー): 先端に向かって細くなる形状。流体の勢いを調整するバルブの部品や、ノズル先端などに使用されます。
- パイプ形状(中空形状): ブッシュ、スリーブ、シリンダーなど。内径・外径ともに高い同軸度(中心のズレのなさ)が求められるものに最適です。
一般的なボルトやナットから、工作機械のテーブルを動かすための精密な送りねじまで、様々なねじ形状の加工が可能です。
- 溝付き形状: Oリング(ゴムパッキン)をはめ込むためのシール溝や、部品の抜け止めに使うスナップリング(Eリング・Cリング)用の溝など。
近年では、旋盤機能とフライス機能を一台に併せ持つ「複合加工機(ターニングセンタ)」の普及が進んでいます。これにより、円柱の側面に平面を作ったり(Dカット)、中心軸から外れた位置に穴を開けたり(偏心穴あけ)と、回転体ではない非対称で複雑な形状であっても、一度機械にセットするだけで完成させることが可能になっています。
執筆者のひとこと:基本は「丸もの」ですが、最近の複合加工機の進化によって旋盤単体でカバーできる形状の幅は劇的に広がっています。かつては複数の機械を行き来して何日もかかっていた複雑な部品が、一度のセッティングで目の前で一気に完成していく様子は、技術の進化を実感できて何度見てもワクワクします。
使用される主な旋盤機械の種類
多様な加工を実現するため、旋盤加工には目的や生産量に応じたいくつかの機械が存在します。
- 汎用旋盤(手動旋盤): 作業者がハンドルを手で回して刃物を操作する、昔ながらの旋盤です。試作品や修理部品など、1個〜数個の単品加工に威力を発揮します。作業者の熟練した技術が直接仕上がりに反映されるのが特徴です。
- NC旋盤・CNC旋盤: コンピュータプログラム(Gコードなど)によって、主軸の回転や刃物の動きを自動制御する旋盤です。現在主流の機械であり、同じ品質の部品を数十個〜数千個単位で安定して連続生産するのに適しています。
- スイス型自動旋盤(ピーターマン式): 細長い金属棒(バー材)を「ガイドブッシュ」という装置で支えながら加工する、特殊な自動旋盤です。削る部分のすぐ近くを支えるため材料がたわまず、医療機器や時計の部品など、極小で細長い部品の超精密・大量生産に特化しています。
旋盤 加工手順を7つのステップで詳細解説
高品質な金属部品を安定して作り出すためには、正しい旋盤の加工手順を踏むことが不可欠です。ここでは、一般的な旋盤加工における手順を7つのステップに分けて詳細に解説します。
ステップ1:図面の確認と加工計画の立案
まずは顧客から支給された設計図面を詳細に読み解きます。「どのような最終形状か」「寸法公差(許容される誤差)はどれくらいか」「指定された表面粗さ(滑らかさ)は満たせるか」「金属の材質は何か」を確認します。その上で、材料のどの面から削り始めるのか、どのような順番で工具を当てれば最も精度が高く、かつ早く加工できるのかという「加工手順(工程設計)」を決定します。NC旋盤の場合は、この計画に基づいて加工プログラムを作成します。
ステップ2:材料(ワーク)の準備とチャッキング
図面の最大仕上がり寸法よりも一回り大きい(数ミリ太い)金属材料を用意します。次に、旋盤の主軸にある「チャック」と呼ばれる3つまたは4つの爪を持つ固定具に材料をしっかりと挟み込みます。これを「チャッキング」と呼びます。この際、材料が回転した時にブレ(芯振れ)が出ないよう、ダイヤルゲージなどの測定器を用いて正確に回転の中心を合わせる「芯出し」という作業が非常に重要です。芯出しが不十分だと、削った部品がいびつな形になってしまいます。
ステップ3:バイト(刃物)の選定と取り付け
加工する形状(外径、内径、ねじ切りなど)や金属の材質に合わせて、最適なバイトを選び、刃物台(タレット)にセットします。このとき、刃先の高さが材料の回転中心(中心軸)とぴったり合うように微調整を行う「芯高(しんだか)調整」が必須です。刃先の高さがコンマ数ミリでもずれていると、きれいに削れなかったり、端面を削った際に中心に「でべそ」のような削り残しができたりしてしまいます。
ステップ4:切削条件の設定
きれいに、かつ効率よく削り、さらに刃物の寿命を延ばすために、以下の3つの「切削条件」を金属の材質や工具の特性に合わせて最適に設定します。
- 主軸回転数(切削速度): 材料を回すスピードです。硬い金属は遅く、柔らかい金属は速く回すのが基本です。
- 送り速度: バイトを移動させるスピードです。早く送れば加工時間は短縮されますが、表面が粗くなります。
- 切り込み量: 一度に刃物を金属に食い込ませる深さです。
※NC旋盤の場合は、これらの条件をプログラムの数値として事前に入力しておきます。
ステップ5:荒加工(荒削り)
いきなり図面通りの寸法に削ることはありません。まずは図面の仕上がり寸法に対して、あえて0.1mm〜0.5mmほどの「削り代(とりしろ)」を残した状態で、大まかに一気に削り出します。この工程を荒加工と呼びます。精度よりも加工効率を重視し、切り込み量や送り速度を大きく設定して素早く不要な肉を落とします。また、金属は削られると内部の応力(歪み)が解放されて変形したり、摩擦熱で膨張したりするため、一度荒加工を行って金属を落ち着かせる意味合いもあります。
ステップ6:仕上げ加工
荒加工で残したわずかな削り代を、精度良く削り落として最終的な図面寸法にぴったりと仕上げる工程です。荒加工とは別の「仕上げ専用の鋭いバイト」を使用するのが一般的です。切り込み量や送り速度を小さく設定し、表面を鏡のようになめらかに仕上げ(表面粗さの向上)、100分の1ミリ、あるいは1000分の1ミリ(ミクロン)単位でのシビアな寸法精度を追求します。
ステップ7:測定・検査
すべての切削加工が終わったら、材料を旋盤から外し(寸法によってはチャックにつけたまま)、ノギス、マイクロメーター、シリンダゲージなどの精密測定器を用いて検査を行います。図面通りの寸法・形状・幾何公差・表面粗さに仕上がっているかを厳密にチェックし、問題がなければ完成となります。量産の場合は、この測定結果を機械にフィードバックし、刃物の摩耗による寸法のズレを微調整(オフセット補正)し続けます。
執筆者のひとこと:7つの工程の中で、最終的な精度を最も左右するのはステップ2の「芯出し」とステップ3の「芯高調整」です。どんなに最新の機械や完璧なプログラムを使っても、最初のセッティングがほんのわずかにズレているだけで全てが台無しになります。現場でよく言われる「段取り八分」という言葉の通り、削り始める前の地道な準備作業にこそ、加工の真髄が詰まっています。
旋盤加工に適した主な金属材料の特徴
金属の旋盤加工では、加工される側(ワーク)の材質によって「削りやすさ(被削性)」が大きく異なります。ここでは旋盤加工でよく使われる代表的な金属の特徴を解説します。
鉄鋼・炭素鋼(SS400、S45Cなど)
機械部品の構造材や軸として最も一般的に使用される素材です。適度な強度があり、加工性も良好で、刃物の摩耗も比較的穏やかです。安価で流通量も多いため、旋盤加工のベースとなる標準的な金属と言えます。
アルミニウム合金(A2017、A5052など)
軽くて柔らかいため、金属の中でも非常に削りやすい素材です。高い主軸回転数(高速切削)で加工することができ、加工時間が短くて済みます。適切な刃物を使用すれば、切削面を非常に美しい光沢に仕上げることが可能です。
ステンレス鋼(SUS304、SUS316など)
錆びにくく強度が高いため、食品機械や医療機器、屋外の部品などによく使われます。しかし、熱伝導率が低いため切削熱が刃先にこもりやすく、さらに加工すると硬くなる性質(加工硬化)があるため、「難削材(削りにくい材料)」に分類されます。刃物の早期摩耗を防ぐため、適切な工具選定と切削油による強力な冷却が必須です。
真鍮・黄銅(C3604など)
銅と亜鉛の合金です。金色の美しい外観を持ち、電気伝導性にも優れています。最大の特徴は、鉛などが添加されている快削黄銅の場合、削りくずが細かく分断されやすいことです。切りくずが刃物や材料に絡みつかないため、自動旋盤を使用した無人での大量生産に非常に適しています。
執筆者のひとこと:図面上でまったく同じ寸法・形状であっても、材質が変われば刃物の選び方も削る音も別物になります。アルミや真鍮のサクサクと小気味よく削れる感覚も好きですが、手強いステンレス特有の熱やクセをコントロールし、ピカピカの綺麗な面に仕上げられたときの達成感は格別です。それぞれの金属の「性格」を理解して付き合うのが、加工者の腕の見せ所です。
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FAQ
Q1:旋盤加工とフライス加工の最も大きな違いは何ですか? A:回転するものが異なります。旋盤加工は「材料が回転」して固定された刃物に当たり、主に円柱や円錐状の部品を作ります。一方、フライス加工は「刃物が回転」して固定された材料を削り、平面や四角いブロック形状、溝などを作るのに適しています。
Q2:旋盤加工の「荒加工」と「仕上げ加工」を分ける理由は何ですか? A:寸法精度と表面の美しさを確保するためです。一気に目的の寸法まで削ろうとすると、切削抵抗や摩擦熱で金属が変形し、精度が出ません。そのため、荒加工で大まかに削って金属の歪みを逃がした後、仕上げ専用の刃物で慎重にミクロン単位の調整を行います。
Q3:NC旋盤の「NC」とは何の略ですか? A:Numerical Control(数値制御)の略です。作業者が手動でハンドルを回すのではなく、プログラムされた数値データ(座標や回転数)に基づいて機械が自動的に刃物を動かし、均一な品質で部品を連続生産できるのが特徴です。
当社は、日本、タイ、インドに拠点を持ち、50年以上にわたる豊富な加工経験と、アジア最大級の規模を誇る1,000台を超える自動旋盤で毎日100万個以上の精密切削部品を生産し、ロットサイズを問わず自動車、電機、医療、航空等の幅広い業界のお客様へ安定した納入で、アジア、欧州、北米、南米まで製品をお届けしています。
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著者・監修者情報: 本記事は、E&H Precisionの製造技術者、品質管理担当者、および営業技術担当者が保有する知見をもとに作成し、実際の加工事例、品質改善活動、加工技術、材料特性、図面、規格などに関する情報を、製造現場の経験に基づいて発信しています。掲載情報については、公開前に社内技術者による内容確認を実施し、正確性と実用性の向上に努めています。
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